描き直された図の孫引きではなく、公式のWordテンプレートそのものに基づいたPRISMA 2020フローダイアグラムの解説です。各ボックスのラベルを原文のまま示し、どの数値をどこに書くのか、そして方法論の査読者が必ず確認する3つの検算を扱います。システマティックレビューをまとめていて、数値を一度で整合させたい方のために書きました。

査読に回ってくるPRISMAフローダイアグラム(flow diagram)の多くは、形は正しいのに数値が間違っています。ボックスは他人の論文からの写しで、ラベルは公式テンプレートから一語ずれ、数値は整合しない——そして方法論の査読者は必ずそこに気づきます。数値を整合させることこそが、このダイアグラムの唯一の役割だからです。
以下の内容はすべて、描き直された図ではなく、公式のPRISMA 2020テンプレートそのものに基づいています。ラベルを引用している箇所は、PRISMA声明のウェブサイトが配布しているWordテンプレートからの原文どおりの引用です。
Quick answer
自分のレビューに合ったテンプレートをダウンロードします。テンプレートは 4種類 あり、新規か更新版か、そしてデータベースとレジスター以外の情報源も検索したかで分かれます。すべての (n = )を埋め、使わなかったグレーのボックスを削除し、 特定 − 除去 = スクリーニングと 評価 − 除外 = 組み入れ が成り立つか確認します。最後の2つのボックスに入るのは別々の数値です。組み入れた 研究の数と、その研究の報告の数です。
PRISMA 2020フローダイアグラムは何のためにあるのか
このダイアグラムは、読者が他の方法では知りようのない1つの問いに答えるために存在します。検索で得られたもののそれぞれがどうなったのか、そしてそれはなぜか、という問いです。
PRISMA 2020チェックリストの項目16aは、「検索で特定された記録の数からレビューに組み入れられた研究の数まで、検索と選択のプロセスの結果を、理想的にはフローダイアグラムを用いて記述する」ことを著者に求めています。項目16bは、多くの人が忘れる部分を付け加えています。組み入れ基準を満たしそうに見えたのに除外した研究を引用し、その理由を述べることです。
この2つが対になっている点が重要です。ダイアグラムが数値を示し、項目16bが「惜しくも除外した研究」の名前を挙げさせます。実際のスクリーニング記録までさかのぼれないダイアグラムは、どれほど見た目が整っていても役目を果たしていません。
4種類のテンプレートのどれを使うべきか
公式テンプレートは1種類ではなく4種類あります。間違ったものを選ぶのは最も起こりやすいミスであり、後から最も気づきにくいミスでもあります。
| レビューの種類 | 検索した情報源 | テンプレート |
|---|---|---|
| 新規システマティックレビュー | データベースとレジスターのみ | New SRs, v1 — 1列構成 |
| 新規システマティックレビュー | データベース・レジスターおよびその他の情報源 | New SRs, v2 — 2列構成 |
| 更新版システマティックレビュー | データベースとレジスターのみ | Updated SRs, v1 |
| 更新版システマティックレビュー | データベース・レジスターおよびその他の情報源 | Updated SRs, v2 |
テンプレートはWord文書です。PRISMA声明のウェブサイトはダイアグラムを生成するShinyアプリも提供しており、手作業でレイアウトするよりスクリーニングの数値から自動生成したい場合には知っておく価値があります。
「その他の情報源(other sources)」は、思われているより範囲が広い概念です。引用チェイス——参考文献リストをたどる、組み入れた研究の被引用文献を確認する——を少しでも行ったなら、それは別の方法による検索であり、2列版が必要です。ウェブサイトのハンドサーチや団体への問い合わせも同様です。
フローダイアグラムの全ボックスを順番に
以下はv1テンプレート、つまりデータベースとレジスターのみを検索した新規レビュー用です。ラベルは原文のままで、(n = )は自分で数値を入れる箇所を示します。
フェーズ1 — Identification(特定)
- Records identified from*: Databases (n = ), Registers (n = ) ——データベース・レジスターから特定された記録
- Records removed before screening: Duplicate records removed (n = ), Records marked as ineligible by automation tools (n = ), Records removed for other reasons (n = ) ——スクリーニング前に除去された記録(重複の除去、自動化ツールによる不適格判定、その他の理由)
フェーズ2 — Screening(スクリーニング)
- Records screened (n = ) → Records excluded** (n = ) ——スクリーニングされた記録 → 除外された記録
- Reports sought for retrieval (n = ) → Reports not retrieved (n = ) ——取得を試みた報告 → 取得できなかった報告
- Reports assessed for eligibility (n = ) → Reports excluded: Reason 1 (n = ), Reason 2 (n = ), Reason 3 (n = ), etc. ——適格性を評価した報告 → 理由別に除外された報告
フェーズ3 — Included(組み入れ)
- Studies included in review (n = ) ——レビューに組み入れられた研究
- Reports of included studies (n = ) ——組み入れられた研究の報告
Identification、Screening、Includedという3つのフェーズラベルは、背骨のように左端を縦に走ります。左側の列がメインの流れで、右側の各ボックスは出口、つまり各ステップでプロセスから外れたものの記録です。
除外ボックスが何を求めているかに注目してください。タイトル・抄録スクリーニング段階のRecords excludedは単一の数値だけで構いません。数千件の1件ごとに理由を求める人はいません。一方、全文段階のReports excludedは理由ごとの数値を求めます。ここは査読者が最も注意深く読むボックスであり、「Reason 1, Reason 2, Reason 3」はプレースホルダーです。実際の基準(「対象集団が異なる」「対照群がない」「学会抄録のみ」など)に置き換えてください。
記録・報告・研究は3つの別々のカウント
これがダイアグラムの土台となる概念であり、最もよく「論文数」に押しつぶされてしまう概念でもあります。
| 用語 | 意味 | 登場する場所 |
|---|---|---|
| 記録(record) | データベースやレジスターが返すタイトルと抄録——検索ヒット1件 | 特定とスクリーニングのボックス |
| 報告(report) | 全文として取得した文書そのもの——論文、プレプリント、学位論文、試験報告書 | 取得と適格性のボックス |
| 研究(study) | 研究活動そのもの。複数の報告にまたがることも、1つの報告に複数の研究が含まれることもある | 最後のボックス |
切り替わるのは取得の段階です。「Records screened」までは検索ヒットを数えており、「Reports sought for retrieval」からは自分で探しに行った文書を数えています。
そして最後の2つのボックスは、意図的に2つに分かれています。Studies included in reviewとReports of included studiesは通常、異なる数値になります。主要論文と2年後の追跡論文を持つ試験は、1つの研究と2つの報告です。この2つのボックスが同じ数値になることはあり得ますが、思い込みで済ませず確認してください。同じ数値であることは、この区別が適用されなかった最も典型的な兆候です。
第2列:他の方法による研究の特定
v2テンプレートを使うと、右側に**「Identification of studies via other methods(他の方法による研究の特定)」**という見出しの第2列が現れます。最初のボックスは次のとおりです。
- Records identified from: Websites (n = ), Organisations (n = ), Citation searching (n = ), etc. ——ウェブサイト、団体、引用検索などから特定された記録
この列はその後、独自の取得・適格性評価の経路をたどります。Reports sought for retrieval → Reports not retrieved、続いてReports assessed for eligibility → Reports excludedを経て、最下部で共通のStudies included in reviewボックスに合流します。
この構造から導かれる、見落とされがちな点が2つあります。
- **他の方法の列にはスクリーニングのボックスがありません。**引用チェイスで見つけた記録は直接取得の段階に進みます。数千件のタイトルをスクリーニングしているわけではなく、すでに特定の文献を手にしているからです。
- **2つの列は合流するのであって、並列に合算するのではありません。**最後のボックスは両ルートの研究を合わせて数えるため、データベース検索と引用チェイスの両方で見つかった研究は、実際に先に見つけたルートで1回だけ数えます。
ほぼ全員が削除してしまう2つの脚注
テンプレートには、ボックスラベル自体に記号で示された2つの脚注があります。これらはテンプレートの一部であり、削除すると査読者が期待するかもしれない情報が失われます。
*Consider, if feasible to do so, reporting the number of records identified from each database or register searched (rather than the total number across all databases/registers). (可能であれば、全データベース・レジスターの合計ではなく、検索した各データベース・レジスターごとに特定された記録の数を報告することを検討する)
**If automation tools were used, indicate how many records were excluded by a human and how many were excluded by automation tools. (自動化ツールを使用した場合は、人間が除外した記録の数と自動化ツールが除外した記録の数を示す)
1つ目は推奨事項ですが、これに従うことは丁寧に報告されたレビューの証しです。「Records identified from: MEDLINE (n = 1,204), Embase (n = 987), CENTRAL (n = 311)」のような記載は単一の合計よりはるかに多くを読者に伝え、データベースごとの検索の再現を可能にします。
2つ目は近年、急速に重要性を増しています。スクリーニングツールで記録を自動除外した場合、除外のどこまでが機械でどこからが人間だったのかを開示する場所が、このダイアグラムです。PRISMA 2020の論文はまた、グレーのボックスは該当する場合にのみ記入し、該当しなければ削除すべきと述べています。自動化を使わなかったなら、その行の横に(n = 0)と書くのではなく、行ごと削除してください。
PRISMAフローダイアグラムを作る4つのルートを比較する
| ルート | 向いている場面 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 公式Wordテンプレート | ラベルの正確さが保証され、準備が不要 | Wordの図形はエクスポートに弱い。本来ベクターであるべき図が、ぼやけたラスター画像としてジャーナルに届きがち |
| Shinyアプリ | スクリーニングの数値から再現可能な形で生成できる | スタイルは固定。正しいダイアグラムは得られるが、自分のスタイルにはできない |
| ベクターで描く(Illustrator、Inkscape、Figma) | 完全なコントロールと、どの幅でもきれいなベクター出力 | ラベルの正確さは自己責任。記憶からではなく、テンプレートの文言から始めること |
| 公開済みのダイアグラムを流用する | 何もない | 他人の間違いを引き継ぐうえ、その数値は自分のものではない |
どのルートを選ぶにしても、手戻りを避ける手順は同じです。
- **まずスクリーニング記録を確定させます。**ダイアグラムは、すでに手元にある数値を描画したものです。スクリーニングが終わる前に描けば、描き直しは確実です。
- **実際に行った検索に基づいてテンプレートを選びます。**見慣れたものではなく。
- **ラベルは公式テンプレートから貼り付けます。**打ち直してはいけません。「Reports sought for retrieval」は「Full texts sought」ではありません。文言そのものが標準です。
- **使わなかったボックスは削除します。**ゼロを書き込むのではなく。
- スタイルを整える前に、数値を整合させます。
数値が合わない理由
次の3つの検算を実行してください。査読で落ちるフローダイアグラムのほぼすべては、このいずれかで破綻しています。
- **特定の収支:**特定された記録(データベース + レジスター)− スクリーニング前に除去された記録 = スクリーニングされた記録。
- **スクリーニングの収支:**スクリーニングされた記録 − 除外された記録 = 取得を試みた報告。続いて、取得を試みた報告 − 取得できなかった報告 = 適格性を評価した報告。
- **適格性の収支:**評価した報告 − 全除外理由の合計 = 組み入れた研究の元になった報告。
最もよくある破綻は3つです。
**重複除去を書く場所の間違い。**重複除去は「Records removed before screening」に属します。特定ボックスとスクリーニングボックスの間で黙って処理してはいけません。特定の合計からスクリーニングの合計を引いた差が、どこにも現れない数値になっているなら、原因はこれです。
**除外理由の合計が合わない。**全文除外の1件ごとに、理由はちょうど1つです。2つの理由に該当する報告も、実際に先に適用した理由の下で1回だけ数えます。
**最下部で研究と報告を混同している。**前述のとおりです。終盤に文献を追加した後は特に再確認してください。追跡論文を1本足すと、研究数は変わらないまま報告数だけが変わるからです。
PRISMAダイアグラムは再利用できるのか:ライセンスの実際
再利用できます。しかも報告基準としては珍しいほど条件が明快です。
公式テンプレートには**クリエイティブ・コモンズ表示4.0(CC BY 4.0)**ライセンスが付与されており、出典を表示すれば再配布・改変・商用利用が認められています。これには、自分のツールで描き直すこと、ジャーナルのハウススタイルに合わせて再スタイルすること、有料購読の論文に掲載することが含まれます。
出典表示の文言はテンプレート自体に印字されています。
Source: Page MJ, et al. BMJ 2021;372:n71. doi: 10.1136/bmj.n71. This work is licensed under CC BY 4.0.
この行を残すか、参考文献リストでPRISMA 2020声明を引用し、図の説明文からそれを参照してください。ダイアグラム自体は、Boers、Mayo-Wilsonら、Stovoldらが提案した以前のフローダイアグラムを基にしたもので、PRISMA 2020の論文がその経緯に謝辞を述べています。この系譜まで再現する必要はありませんが、引用先が「PRISMA」ではなく2020年声明になるのはこのためです。
投稿に向けたフォーマット
フローダイアグラムも図の1つであり、原稿の他のすべての図と同じチェックを通ります。ここでは特に2点が他の図以上に重要です。
**ベクター形式であること。**このダイアグラムは文字と線だけでできています。まさにラスター化すると崩れる種類のコンテンツです。多くのジャーナルが線画をEPS、AI、PDFで求めるのはこのケースのためであり、Wordの図のスクリーンショットは、フローダイアグラムが差し戻される最も一般的な理由です。
**縮小に耐えること。**このダイアグラムは通常、システマティックレビューの中で最も幅が広く、最も文字の多い図です。投稿先が1段組で組版するなら、すべての(n = )ラベルがその幅で読める必要があります。最終的な印刷サイズで作って確認してください。スライドのスケールで作って祈るのはやめましょう。
こうしたチェックが特定のジャーナルでどう機能するかは、Scientific Reportsの図表要件ガイドで扱っています。文字の詰まったこの種のダイアグラムが最初にぶつかる、最小文字サイズと線の太さの規定も含まれます。
よくある質問
PRISMA 2020フローダイアグラムにはどんなボックスがありますか? データベースとレジスターから特定された記録、スクリーニング前に除去された記録、スクリーニングされた記録、除外された記録、取得を試みた報告、取得できなかった報告、適格性を評価した報告、理由別に除外された報告、レビューに組み入れられた研究、組み入れられた研究の報告——これらがIdentification、Screening、Includedの下にまとめられています。
記録・報告・研究の違いは何ですか? 記録(record)は検索ヒットです。報告(report)は取得した文書です。研究(study)は研究活動そのもので、複数の報告にまたがることがあります。
PRISMA 2020テンプレートは何種類ありますか? 4種類です。新規レビュー用と更新版レビュー用があり、それぞれにデータベース・レジスター版と、その他の情報源を加えた版があります。
2列版は必要ですか? 引用チェイス、ウェブサイト検索、団体への問い合わせのいずれかを行ったなら、必要です。
フローダイアグラムは必須ですか? 項目16aは、検索と選択のプロセスを「理想的にはフローダイアグラムを用いて」記述すべきとしています。実務上、PRISMA準拠を要求するジャーナルはダイアグラムを期待します。
PRISMAダイアグラムを自分の論文に掲載できますか? できます。CC BY 4.0の下で、Page MJ, et al. BMJ 2021;372:n71への出典表示を添えてください。
該当しないボックスはどうすればいいですか? 削除してください。PRISMA 2020の論文は、グレーのボックスは該当する場合にのみ記入し、該当しなければ削除すべきとしています。
次のステップ
今まさにダイアグラムを作っているなら、PRISMA声明のサイトから自分のレビューに合ったテンプレートをダウンロードし、数値を埋め、スタイルに時間をかける前に上記の3つの検算を実行してください。
Wordではジャーナルが求めるベクター出力が得られず、図として作り直すつもりなら、図表作成ツールの比較記事が、どのツールが本当に出版品質のベクターを書き出せるのか、どれが謳っているだけなのかを扱っています。
図にしたい対象がレビューではなく臨床試験なら、PRISMAはテンプレートを間違えています。ランダム化比較試験に対応するのはCONSORT 2025 フローダイアグラムで、独自のボックスと独自の数え方を持ち、2025年にラベルの一部が変わりました。
参考資料
- PRISMA 2020 flow diagram — templates and guidance — PRISMA statementhttps://www.prisma-statement.org/prisma-2020-flow-diagram2026年8月11日 閲覧
- PRISMA 2020 flow diagram template — new systematic reviews, databases and registers only (DOCX) — PRISMA statementhttps://www.prisma-statement.org/s/PRISMA_2020_flow_diagram_new_SRs_v1-lml8.docx2026年8月11日 閲覧
- PRISMA 2020 flow diagram template — new systematic reviews, databases, registers and other sources (DOCX) — PRISMA statementhttps://www.prisma-statement.org/s/PRISMA_2020_flow_diagram_new_SRs_v2-t3jp.docx2026年8月11日 閲覧
- Page MJ, et al. The PRISMA 2020 statement: an updated guideline for reporting systematic reviews. BMJ 2021;372:n71 — BMJ / PubMed Centralhttps://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8005924/2026年8月11日 閲覧
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