分子軌道の図(MO図)ジェネレーター
O₂、N₂、CO、HFなどの二原子分子の分子軌道図を、σ軌道とπ軌道の正しい順序、構成原理とフントの規則による電子の配置、結合次数と磁性とともに作ります。大学の一般化学のための図です。
分子軌道の図(MO図)の例
全ラベル付きのO₂、かんたんなH₂、N₂とO₂の比較、O₂の穴埋め版の4つの分子軌道の図です。いずれも添えたプロンプトから実際に生成した図で、クリックで読み込んで編集できます。

分子軌道図の描き方:O₂を例に
ここに載せたラベル付きの図はO₂ですが、描き方の決まりはどの二原子分子にも共通です。縦軸はエネルギーで上ほど高く、両外側の列に2つの原子、中央に分子を置きます。
- 1
外側に価電子の原子軌道
それぞれのO原子の2sと3本の2pの線に、6個の価電子 2s² 2p⁴ を入れます。1sの内殻は省きます。
- 2
分子軌道は原子軌道と同じ数、破線で結ぶ
2つの2sからσ2sとσ*2s、6つの2pからσ2p、2つのπ2p、2つのπ*2p、σ*2pができます。入る軌道が8つなら、できる軌道も8つです。
- 3
下から詰め、フントの規則に従う
1本の線に電子2個、スピンは逆向き。2つのπ*2pには、どちらかで対をつくる前に1個ずつ入ります。
- 4
結果を下に書く
結合次数は (8 − 4) / 2 = 2。不対電子が2個あるので、O₂は常磁性です。

O₂の分子軌道図
左右に酸素原子、中央にO₂の分子軌道。
- 1
価電子は12個
各O原子から6個、σ2sから順に詰めます。
- 2
σ2pがπ2pより下
O₂以降はσ2pが2つのπ2pの下に来ます。
- 3
結合次数2・常磁性
(8 − 4) / 2 = 2。π*2pに不対電子が1個ずつ。

N₂の分子軌道図
左右に窒素原子、中央にN₂の分子軌道。
- 1
価電子は10個
各N原子から5個、σ2sから順に詰めます。
- 2
π2pがσ2pより下
s-p混合でσ2pがπ2pの上に来ます。
- 3
結合次数3・反磁性
(8 − 2) / 2 = 3の三重結合。電子はすべて対。
H₂〜Ne₂、分子イオン、HF、NO、水、ベンゼンの分子軌道図
O₂、N₂、COは上に描いてあります。授業で問われるほかの分子について、それぞれの図で示すべきこと、つまり電子の入り方、2p軌道の順序、結合次数、磁性をまとめました。
H₂とHe₂の分子軌道図
もっとも単純な分子軌道図で、両側に1s軌道が1つずつ、分子軌道は σ1s と σ*1s の2つです。H₂ は2個の電子をσ1sに入れ、結合次数 (2 − 0) / 2 = 1、反磁性です。He₂ は4個でσ*1sまで埋まり、結合次数は0。ヘリウムが単原子のままでいるのはこのためです。その間のイオンはどちらも結合次数 ½ で、H₂⁺ は電子1個、He₂⁺ は3個です。
Li₂とBe₂の分子軌道図
価電子が入るのは2s軌道だけなので、図の大半は空の2pの線です。Li₂:価電子2個がσ2sに入り、結合次数1、反磁性。リチウムの蒸気中に見られる実在の分子です。Be₂:電子4個で σ2s² σ*2s²、結合次数0なので、安定なBe₂分子はできないと考えられます。1sの内殻は、授業で扱う場合にだけ下のほうに描きます。結合性と反結合性に2個ずつ電子が加わるだけで、結合次数は変わりません。
B₂の分子軌道図
価電子6個:σ2s² σ*2s² π2p¹ π2p¹。2つのπ2p軌道はエネルギーが等しいので、最後の2個の電子は1個ずつ別々に入り、不対のままです。結合次数 (4 − 2) / 2 = 1、常磁性。B₂はs-p混合の証拠です。O₂のようにσ2pがπ2pより下にあれば、2個の電子はσ2pで対をつくってB₂は反磁性になるはずですが、実測では常磁性なので、π2pのほうが低いことになります。
C₂の分子軌道図
価電子8個:σ2s² σ*2s² π2p⁴。π2pがσ2pより下にあり、σ2pは空のままです。結合次数 (6 − 2) / 2 = 2、電子はすべて対をつくり反磁性。この単純な描像では、結合をつくる2組の電子対はどちらもπです。σ2sとσ*2sは打ち消し合い、σ2pは空なので、C₂の二重結合にはσの部分がありません。二重結合をσ結合1つとπ結合1つとみるふつうの考え方とは違う点です。
F₂とNe₂の分子軌道図
どちらもO₂と同じくσ2pがπ2pより下の順序です。F₂:価電子14個で σ2s² σ*2s² σ2p² π2p⁴ π*2p⁴、結合次数 (8 − 6) / 2 = 1、すべて対をつくり反磁性。ルイス構造の単結合と一致し、しかも弱い結合です。Ne₂:電子16個でσ*2pまで埋まり、結合性8個に対して反結合性8個、結合次数0。ネオンは原子のままです。
分子イオン:O₂⁺、O₂⁻、O₂²⁻、N₂⁺
電子で満たした図のいちばん上で、電子を加えたり取り除いたりします。O₂⁺(価電子11個)はπ*電子を1個失い、結合次数2.5、不対電子1個で常磁性。O₂⁻、超酸化物イオン(スーパーオキシド、13個)は結合次数1.5で常磁性。O₂²⁻、過酸化物イオン(14個)は結合次数1で反磁性。結合はこの順に長くなり、O₂⁺がいちばん短くなります。N₂⁺(9個)はσ2pの電子を1個失い、結合次数2.5、常磁性です。
NOの分子軌道図
異核二原子分子の図です。酸素のほうが電気陰性度が大きいので、酸素の2sと2pは窒素より低い位置にあります。価電子11個(5 + 6)を詰めると π*2p に電子が1個入り、結合次数 (8 − 3) / 2 = 2.5、常磁性です。σ2pとπ2pの順序がどちらでも両方とも満たされているので、この数は変わりません。そのπ*電子を取り除いた NO⁺ は10個で結合次数3となり、N₂やCOと等電子的です。1個加えた NO⁻ は12個で結合次数2です。
HFの分子軌道図
水素の1sは左側の高い位置に、フッ素の2sと2pは右側のずっと低い位置にあります。フッ素はもっとも電気陰性度の大きい元素だからです。対称性が合って組み合わさるのは、Hの1sと、結合軸に沿ったFの2p軌道1つだけで、σ と σ* ができます。フッ素の2sと残り2つの2p軌道は非結合性軌道の線のまま残ります。価電子8個がσと非結合性軌道に入り、結合次数1、反磁性。σ軌道はフッ素の2pに近い位置にあるので、共有電子対はおもにF側に寄っています。これが極性結合です。
H₂Oの分子軌道図
多原子分子の図です。片側に酸素の2sと2p、反対側に2つのHの1s軌道を、同位相と逆位相の2つのグループ軌道として置きます。価電子8個は4つの分子軌道に 2a₁、1b₂、3a₁、1b₁ の順に入ります。1b₁は分子平面に垂直な酸素の2p軌道で、非結合性であり、HOMOです。4a₁と2b₂は空の反結合性軌道です。2組の非共有電子対のエネルギーが異なることは、光電子スペクトルで確かめられます。分子を別の平面に置く教科書では、b₁とb₂のラベルが入れ替わります。
ベンゼンの分子軌道図
π電子系だけを描きます。6つの炭素の2p軌道が組み合わさって、6つのπ分子軌道ができます。いちばん下に節のないもの1つ、節が1つでエネルギーの等しいもの2つ、節が2つのもの2つ、いちばん上に節が3つのもの1つです。6個のπ電子は3つの結合性軌道をちょうど満たして閉殻になり、これが芳香族の安定性を分子軌道から見た姿です。フロスト円(円の中に頂点を下にして描いた六角形)でも同じ準位が得られ、α + 2β、α + β(2つ)、α − β(2つ)、α − 2β になります。
第2周期の等核二原子分子の分子軌道図
Li₂からNe₂までの等核二原子分子について、価電子の数、軌道の順序、結合次数、磁性をOpenStax Chemistry 2eに基づいてまとめました。どの図でもまず確認すべきなのは軌道の順序の列です。
| 分子 | 価電子の数 | 2p由来の軌道の順序 | 結合次数 | 磁性 |
|---|---|---|---|---|
| Li₂ | 2 | π2pがσ2pより下(s-p混合) | 1 | 反磁性 |
| Be₂ | 4 | π2pがσ2pより下(s-p混合) | 0(生成しない) | — |
| B₂ | 6 | π2pがσ2pより下(s-p混合) | 1 | 常磁性(不対π電子2個) |
| C₂ | 8 | π2pがσ2pより下(s-p混合) | 2 | 反磁性 |
| N₂ | 10 | π2pがσ2pより下(s-p混合) | 3 | 反磁性 |
| O₂ | 12 | σ2pがπ2pより下 | 2 | 常磁性(不対π*電子2個) |
| F₂ | 14 | σ2pがπ2pより下 | 1 | 反磁性 |
| Ne₂ | 16 | σ2pがπ2pより下 | 0(生成しない) | — |
動くのは2p由来の軌道の順序だけです。どの分子でもσ2sとσ*2sがいちばん下、σ*2pがいちばん上にあり、違いはσ2pが2つのπ2pより上か(Li₂〜N₂)下か(O₂〜Ne₂)だけです。分子名を指定すれば、その分子の順序で描かれます。
結合性軌道と反結合性軌道の違い
結合性軌道(σ、π)は2つの原子核の間の電子密度を高め、もとの原子軌道よりエネルギーが低くなります。反結合性軌道(σ*、π*)は原子核の間に節面をもち、エネルギーが高くなります。結合性軌道の電子は原子どうしを結びつけ、反結合性軌道の電子はその効果の一部を打ち消します。
| 結合性軌道 | 反結合性軌道 | |
|---|---|---|
| 記号 | σ、π | σ*、π*(*が反結合性を示す) |
| エネルギー | もとの原子軌道より低い | もとの原子軌道より高い |
| 原子核間の電子密度 | 高まる(波が強め合う) | 節面でゼロ(波が打ち消し合う) |
| 結合への効果 | 電子1個ごとに結合次数を½増やす | 電子1個ごとに結合次数を½減らす |
| 図の中の位置 | 原子軌道の線より下 | 原子軌道の線より上 |
| O₂の場合 | σ2s、σ2p、π2p×2(電子8個) | σ*2s、π*2p×2(電子4個)、σ*2pは空 |
まず半矢印を確認しましょう。対になった電子は逆向き、同じエネルギーの軌道には対をつくる前に1個ずつ入り(フントの規則)、1本の線に入る電子は2個まで。O₂の2個のπ*電子を対で描いていないか、最初に確かめるべき点です。
分子軌道の図(MO図)とは?
分子軌道の図(MO図)は、分子のエネルギー準位図です。両端の列に各原子の原子軌道、中央にそれらからできる分子軌道を置き(結合性軌道σ・πは低く、反結合性軌道σ*・π*は高く)、電子を下の準位から順に入れていきます。電子を数えれば結合次数=(結合性電子−反結合性電子)/2が求まり、不対電子があればその分子は常磁性だとわかります。
要点
- σ2pとπ2pの順序はN₂とO₂の間で入れ替わります。Li₂からN₂までは2sと2pの相互作用(s-p混合)でσ2pが2つのπ2pより上に押し上げられ、O₂とF₂では2sと2pのエネルギー差が大きいためσ2pはπ2pの下にとどまります。O₂をN₂の順序で描くのが最も多い誤りです。
- 結合次数=(結合性電子の数−反結合性電子の数)/2。N₂は結合性8個・反結合性2個の価電子で結合次数3、O₂は8個と4個で2、He₂は2個と2個で0になるため、分子として存在しません。
- O₂が磁石に引き寄せられる理由を分子軌道法は説明できます。最後の2個の電子はフントの規則に従って同じエネルギーの2つのπ*2p軌道に1個ずつ入り、不対電子として残ります。磁気てんびんで確かめられますが、ルイス構造には現れません。
- 入った軌道の数だけ分子軌道ができます。1s軌道2つからσ1sとσ*1s、3つずつの2p軌道2組からσ2p、π2p×2、π*2p×2、σ*2pができます。6つ入って6つ出るわけです。
- 異核二原子分子では左右の列の高さがずれます。CO、NO、HFでは電気陰性度の大きい原子の軌道が低い位置にあり、結合性軌道はエネルギー的にその原子に近くなります。価電子11個のNOの結合次数は(8−3)/2=2.5です。
分子軌道の図についてよくある質問
ラベル付きの分子軌道図には何を描けばいいですか?
両端の列に各原子の原子軌道、中央に名前付きのすべての分子軌道(σ2s、σ*2s、σ2p、π2p、π*2p、σ*2p)、それらをつなぐ破線、半矢印で表した電子、上向きのエネルギー軸です。多くの授業では、結合次数と常磁性か反磁性かの記入も求められます。
He₂、Be₂、Ne₂が存在しないのはなぜですか?
分子軌道図で、反結合性軌道の電子の数が結合性軌道と同じになり、結合次数が0になるからです。He₂は2個と2個、Be₂は2s軌道で2個と2個、Ne₂は8個と8個です。正味の結合がないので、2つの原子がばらばらでいるほうがエネルギーが低くなります。低温の気相実験でごく弱く結びついた対が検出されたことはありますが、どれも安定な分子はつくりません。
O₂はなぜ常磁性なのですか?
最後の2個の価電子が2つのπ*2p軌道に1個ずつ、不対のまま入るからです。2つの軌道は同じエネルギーなので、フントの規則により対をつくる前に1個ずつ入ります。ルイス構造ではO₂の電子はすべて対になり、液体酸素が磁石にくっつく理由を説明できませんが、分子軌道の図なら説明できます。
N₂とO₂で軌道の順序が違うのはなぜですか?
2sと2pの相互作用(s-p混合)のためです。Li₂からN₂までは2sと2pのエネルギーが近く、両者のσ型の組み合わせが混ざり合って、σ2pが2つのπ2pより上に押し上げられます。O₂とF₂では2sと2pの差が大きく、混合が弱いので順序は入れ替わらず、σ2pはπ2pの下にとどまります。
分子軌道の図から結合次数はどう求めますか?
結合性軌道と反結合性軌道の電子をそれぞれ数え、差をとって2で割ります。O₂なら、結合性8個(σ2s、σ2p、π2p×2)から反結合性4個(σ*2s、π*2p×2)を引いて(8−4)/2=2。ルイス構造の二重結合と一致します。He₂やNe₂のように結合次数が0なら、分子は生成しません。
COやHFのような異核二原子分子の図はどう描きますか?
電気陰性度の大きい原子の軌道を、その原子の列に低く描きます。COでは酸素の2s・2pが炭素より低い位置にあり、価電子10個(N₂と同じ数)で結合次数は3です。HFでは水素の1sがフッ素の2p軌道1つと組んでσとσ*をつくり、フッ素の2sと残り2つの2pは非結合性のまま残るので、結合次数は1です。
分子軌道の図とルイス構造はどう違いますか?
ルイス構造は結合を2原子間で共有された電子対として描き、分子軌道の図は電子を分子全体に広がった軌道にエネルギー順に割り振ります。結合次数は多くの場合同じになりますが、O₂の不対電子やNOの2.5のような分数の結合次数を示せるのは分子軌道の図だけです。ルイス構造はこのサイトのルイス構造ジェネレーターで描けます。
分子軌道の図と電子配置の図(軌道図)は同じものですか?
違います。電子配置の図は1つの原子の電子配置を、分子軌道の図は2つの原子の軌道が組み合わさる様子を表します。電子配置の図では1s、2s、2pなどを箱や線で表し、それぞれに矢印を最大2本入れます。分子軌道の図はそれを両端に2つ置き、その間に分子軌道を描きます。どちらも指定して作れます。
3原子以上の分子でも分子軌道の図を作れますか?
定性的な図としてなら作れます。ベンゼンのπ電子系、水の分子軌道、HOMO-LUMOギャップなどです。準位は計算値ではなく教科書どおりの順序で描かれます。量子化学計算の値があれば、依頼文に書き込むとその数値に合わせて描きます。
関連ツールと記事
ほかの図表作成ツールと、その読み方をまとめた記事。
